きみはきっと笑うだろう

記録とか歌詞とか、今の私とか。

20131126

花火のようだと、その人は云いました。背後から射し込む光を浴びて、僅かに微笑んでいるのが見えた。

打ち上げたられた其れの、華やかに咲き誇る姿に。或いは。囲うように、息を詰めて見守った、淡く生き続けようとする光に。その人は、セカイの様を例えた。

どちらも程無くして、しぼみ、堕ちて終わってしまうけど。花やいだ跡さえ、ろくに残していかずに。

そのすげない無情さも良く似ていると、君はまた笑うんだろう。

 

 


夢を見たんです。

幸せな夢だったと、思う。だって君が笑っていたから。

色を唄っていたので。花の色を。ただ、なきたいとおもってしまって。

暗闇に行く道を示す大輪に、道端で足下を照らす小花に。君は分け隔てなく、唄う。

 

 

    赤、紅。暮れる太陽の、大気に融ける

    ような優しさ。零れ出る血のように、

    鮮やかな激情のながれ。明白に響くの

    は、生命と反抗の意思。

 

    穏やかに広がる海の常に平らかな心、

    晴れた空の涼しさ。信号機の「あお」

    は義務。進んでもいいよという、緩や

    かな強制。

 

    ももの花色づき、春を飾り。霞みに引

    き込まれ気づいた先は、まやかし。愛

    しい虚偽の、つくられた世界。

 

    初夏の若葉、命を養う色。幾たびも再

    生を繰返し、安らぎは毒の様に染み込

    み、巡り。それは小さな自己の主張、

    見せかけの調和。

 

    照らす黄色の太陽の恵みを浴びて。麦

    畑の黄金に輝き、雪は白銀に煌めき。

    一面を埋め尽くす希望と幸福。その直

    ぐ下に潜んだ、警戒と孤独と空虚。湖

    に張られた薄い氷の膜のように、危う

    い大地に立ち尽くし、何も見ない振り

    をしていた。

 

 数々の光景を写す暗闇は、脆い世界へ

 の不吉と恐怖を潜めながら。抑圧し、

 威圧し。与えられたそれが劣等と絶望

 からの保守的な感動であることにすら

 気付かせず、ひたすらに威厳と、神秘

 を示していました。

 

 紫丁香花かほる

 紫雲棚引く空への路

 不安も嫉妬も慢心も不満もない。美しき逃避。

 

 

そして。それらは不意に消える。私たちは焦がれて、思い描くしかないんだ。うつつに無いまま、存在した(と思い込んでいる)現象だけは、なくなってくれない。

散りばめられて果てた光は、私たちに色褪せない明日を魅せる。残像を遺したまま。なんて哀しいんだろう。

 

 

 

 

 

目が覚めて、哀しくて。君を探しました。世界にひとりになった感じがして、焦燥。泣き出しそうになったとき、君が来た。どうしたの、と問うてくるから。さっきよりもっと、なきたくなった。

 

君は窓際に座っていて、午後の穏やかな陽射しがその顔に僅かな影をつくる。何に想いを馳せているんだろう、少し遠くの床を見つめながら。

じっと眺めていたら、不意に君が顔を上げた。目があった。軽い既視感。懐かしむように目を細めて、口を僅かに開いた。

 

ああ、そうか。ぼんやりした頭で思う。呟いた言葉は音にならなかった。

その先を知っているよ。

 

君は静かに詞を紡ぐ。

「夢を見ました。きれいで愛おしくて。儚く優しい色で魅せたそれは、まるで――」