ふたりのはなし/そのひとが大事に大事にしてきたものと、彼がこれから闘い続ける場所
あの頃と同じ感覚を感じたかもと思うのは、私の欲望でしかないかもしれない。
でも今も、あの頃も、置いていかれたのは彼の方だと思っている。
あの頃から、その背中を見ながら置いてかれたのは彼だったし、
あの頃からその人は、きっともっと、ずっと、遠くに進んでいくよっていう確信は確かに彼の胸にあったのではないかと思う。
あんなにつよくて脆くて高くて淋しそうで、確かに守られていて、ひとりだったはずなのに、縋り付いていたのはどっちだったんだろう。
けれども確かに、その人は傷つき守られながら、立ち続けて、そこで静かに守ってきたんだろう。